島にポツリの超高級リゾート、コテージに専属バトラーを雇い自然と戯れるブランド。
2026年3月、ついにオープンしたロンドンの地下迷宮スパ、シックスセンズ・ロンドン。
「地下? ロンドンって土地が少ないからそんなもん!?」
「最先端のデジタルハックね、時代だわ〜」と
スルーしそうになりましたが、よくよく考えたらどうにも「嫌な匂い」がするのです。
■「NO SHOES」はどこへ行った?
シックスセンズといえば、かつてはモルディブなどの離れ小島で「NO NEWS, NO SHOES」を掲げた、究極の自然派リゾート。裸足で砂を踏みしめ、自然に還る美学が彼らの真髄でした。
それが今や、ロンドンの意識高い系セレブたちが地下の「バイオハック」に詰めかけている。
現地の声を聞くと、もはやスパというより「NASAの施設」だという。マイナス100度の冷凍室(クライオセラピー)から、数値改善のタスクをこなすリカバリーウェアの着用まで。
「休みに来たのに、なぜか常にタスクをこなしている気分になる」という戸惑いの声も上がっています。
■「寿命ハック」という名の細胞いびり
新ブランド「RoseBar(ローズバー)」が売るのは、DNA解析に基づいた「寿命ハック」。血液検査に3Dボディスキャン……スパに来たはずが、気づけば人間ドック以上の精密検査。
癒やしというより、もはや「細胞の改造」です。
笑えるのは、その冷徹なデバイスの横で、名物の「アルケミー・バー」が鎮座していること。
DNAを解析し、体内データを丸裸にされながら、横ですり鉢をゴリゴリして塩やハーブを混ぜてバスソルト作り。「とってつけた感」を覚えるのは私だけでしょうか?
■ 暴かれた「地下」の正体:スパは不動産の道具か?
なぜ、自然を愛したはずのブランドが「地下」に潜ったのか。調べてみたら、嫌な予感は的中しました。
この建物自体が高騰エリアの超高額レジデンス。要は、シックスセンズの名前を借りて、不動産価値を釣り上げていたのです。
レジデンスは日当たりが良くないと売れませんが、「スパなら地下でも良かろう」という傲慢な発想。
日光を奪われた地下室で、マイナス100度の冷凍庫に入れられて我慢大会。確かに血液循環にはプラスでしょうが、癒やしのかけらもない、もはや生命の危機ですよ。
■「極楽〜」は堕落、というドMの論理
なぜ彼らはそこまでして自分を追い詰めるのか。
深掘りしてみたところ、私たちが温泉に浸かって「は〜極楽」とリラックスする普通の感覚を、彼らは「堕落」と考えるのだそうです。
は? なんじゃそりゃ。
自分を追い込み、耐え抜いて何かに勝つ。それが究極の贅沢だなんて、もはやドMの極致。
■ 巨大資本の影と、大阪の「まともさ」
それもそのはず、シックスセンズは既に巨大資本インターコンチネンタルグループ(IHG)に買収されていました。
スパの立地も箱も、不動産ビジネスの駒にされる。その典型がこのロンドン地下スパだったのです。
……と、ここで思い出したのが、同じグループのインターコンチネンタルホテル大阪。
実は、大阪で私が一番納得のいくホテルスパはここなのです。
日本式の広いお風呂、自然をテーマにしたメニュー、そして水と技術への敬意。
同じグループでも、現場の良心が生きている「まともなスパ」と、不動産価値のために地下で細胞をハックする迷走スパ——その落差は大きい。
かつて「自然に還れ」と囁いていたブランドの変わり果てた姿に、お風呂好きの日本人として、深い「ざわつき」を感じずにはいられません。

