Joali Being(ジョアリ・ビーイング/モルディブ)品性なき富裕層を金ヅルにする観光ウェルネスの末路

世界で唯一の「音の聖地」だった

ラー環礁ボドゥフシ島。39ある全ての施術室には、島内の位置に対応した「シグネチャー音」が惑星周波数と紐づけて配されている。

屋外には12種の楽器を辿る「ディスカバリー・サウンド・パス」。屋内にはサウンドヒーリング音響療法ホール「Seda」。そこにはギター弦を内蔵したベッドが据えられ、巨大な楽器をセラピストが鳴らす。

島丸ごとの設計原理を音響に特化したスパは、世界にここだけ。音響療法とは、外界の音ノイズを排除した上で、設計された周波数と振動を身体に届ける技術である。ジョアリが掲げる効能は、ストレス軽減、睡眠改善、感情調整、痛み管理、瞑想状態、意識の変容。すべて静寂を前提とした効能だ。

他にもヒマラヤ岩塩吸入室、クライオセラピー、ワッツゥ、ハーボロジー。医療スパとは違って、四つの柱(Mind, Skin, Microbiome, Energy)に基づく包括的アプローチを採るそう。食事は栄養士監修で、ヴィーガン、ベジタリアン、ペスカタリアン、肉食までを三つのキッチンで全方位対応する、かなりストイックっぽい。

ホテルと施設の画像を見てうっとりする。「ここなら行ってみたい」と思い詳細を調べると、とんでもない文字が飛び込んできた。

解禁という名の劣化💥

2024年1月、Joali Being は大人オンリーのポリシーを撤回し、子供も受け入れると発表した(出典:Luxury Travel Advisor 2024年1月10日記事)。

ボートで10分の距離には、家族向けの同系ホテルでキッズクラブも備えた Joali Maldives もあるのに、なぜ!?

つまり、ジョアリ・グループは収益目的で、音響療法と大人のリトリートを自ら破壊したのだ。行きたかった気持ちは壊滅した。

ご丁寧にキッズ用プログラムを作り、親子でウェルネスの体験ショッピングを提供する始末。静けさと心・身・魂を整える音響施設アイランドで、子供の黄色い声が轟くなど悪夢でしかない。

それでもなぜか格付け機関の評価が高かったので、真剣にリサーチを開始した。

業界批評家も同じ刃を振っていた

結論。英国のラグジュアリー系旅行批評メディアも、私と同様の手厳しいレビューを放っていた。

引用元は Dorsia Travel(dorsiatravel.com、2024年8月レビュー)。媒体名は映画『アメリカン・サイコ』に登場する「予約の取れない伝説のレストラン」が由来。メディアの名前自体がラグジュアリー業界への皮肉になっている、独立系の批評メディアだ。

以下、引用は全て同記事より。

Joali は自分が何になりたいのか決めなければならない。ウェルネスリトリート——これは明らかにうまくいっていない——なのか、ウェルネスを提供するファミリーリトリートなのか。

ウェルネスリトリートとして、これは明らかにうまくいっていない(clearly has not worked)。

もう一度行くとしても、おそらく子供なしで——彼らが実存的ジレンマを解決するまでは。子供なしで……すみません、平和な眠りに落ちてしまった。

Joali Being はウェルネスを家族向けと違うかたちでやれると思っていたが、うまくいかなかったときに方針転換した賢明さは評価する。さもなくば破産していただろう。

ダークチョコレートとコンブチャの豊富さ、キッズクラブのクオリティの希薄さ。

彼らの子供受け入れポリシーは泥のように不明瞭。最初はクリスマスだけ、今は「ホリデー」。客を混乱させたら戻ってこなくなる。

そして極めつけ🤣

Joali は確かに Being よりは子供向けだが、それは「君はハンニバル・レクターよりはベジタリアンだ」と言うようなものだ。

「商業主義に劣化した」「分別がない」「迷惑」を、業界の中の専門家が同じ言葉で言っていた。私一人の主観ではなかった。

新興の富裕層に蔓延する病

近年の富裕層には、ある共通の症状がある。

それは、「子供のために」を名分にした体験ショッピングだ。

ウェルネスリゾート、ミシュラン星付きレストラン、美術館の特別内覧、オペラのガラ公演——本来は静謐な大人の場所に、「子供に本物を見せたい」という親のエゴが発動する。

問題は、その場に必要な作法を子供に教えもせず、ただ同席させること。レストランで子供の黄色い声はとても響き渡る。注意されると「子供だから仕方ない」と逆ギレするが、恥を知れと言いたい。ケチらずナニーに預けろ。

ここで誤解を避けたい。子連れの親が全員問題だと言っているのではない。世の中には二種類の親がいる

気配りの親:子供がぐずったら、途中で席を立つ。レストランからも、スパの待合室からも、機内でも可能な限り、子供と一緒に一旦その場を離れる。周りに迷惑をかけないよう、自分の楽しみより他人の権利を優先する。

居座る親:子供を放置する。「子供なんだから仕方ないでしょ?大人なんだから我慢しなさいよ」を、周りの客に辛抱を強要する道具として平然と使う。

問題は、居座る親が圧倒的多数派になり、気配りの親を駆逐していることだ。今や気配りの親は「神経質すぎる」「子供がかわいそう」と周りから言われ、肩身が狭い。悪貨が良貨を駆逐している。

これは欧米の真の知的階級が決してやらない振る舞いである。彼らは子供を「小さな大人」として遇する文化を持っており、ふさわしい場にはふさわしい作法を身につけてから連れて行く。連れて行けないと判断すれば、ナニーに預ける。これが配慮であり、品性であり、子供への敬意である。

ところが、新興のグローバル富裕層——特にアジア圏、その中でも残念ながら日本人の親——にこの感覚が薄い。子供を躾けずに「子供だから仕方ない」で済ませる態度は、実は子供を一人の人間として尊重していないということだ。子供をバカにしているのは、他ならぬその親である。

そして、そのバカな親を金づるにするホテル、観光業がある。これに乗っかる親も、これを設計する商業も、私はどちらも大嫌いだ。両者は共犯だ。東京よりも商売の街・大阪に蔓延する、悪しき光景である。

カップル500万円の商品は、誰が破壊するのか

ここで一つ、根本的な問いを立てたい。

カップル客は、ジョアリ・ビーイングのビーチヴィラに1泊3,300ドル、1週間で500万円以上を支払う。この金額は、何への対価か。

500万円は、宿泊料、食事代だけではない。それは、「世界唯一の音響療法アイランドが提供する、静謐な環境とサウンドヒーリング体験」への対価である。

商品は、静寂である。

その商品を、ホテル自身が破壊している。子供を解禁し、賑やかさを島に持ち込み、サウンドパスに走る足音を、Sedaへの導線に親の呼び声を、施術室への往復に子供の歓声を持ち込んだ。カップルの買った静寂500万円はどこに?

ファミリー客の客単価がカップル客より高いから、より権利が大きいのか!?
1週間800万円から1200万円。確かに高い。

ファミリー客が買っているのは「静寂」ではない。「マルチジェネレーショナルな思い出」「ファミリー写真」「キッズプログラム」だ。彼らにとって静寂は無価値であり、むしろ賑やかさが求められている。

つまり、ホテルは二つの異なる商品を、同じ場所で同時に売ろうとしている。一方の商品(静寂)は、もう一方の商品(賑やかさ)の存在によって物理的に破壊される。

これはサービス業として失格である。プライドのあるホテルなら、商品の純度を守るために、片方の客層を諦める。プライドを失ったホテルだけが、両方の客から金を取りながら、片方の客にだけ商品を提供しないという背信を続ける。

500万円を払ったカップル客は、約束された商品を受け取れない。クレームを言えば「子供がいるご家族のご理解もお願いします」と言われる。金を払って商品を奪われ、抗議すれば説教される——これがジョアリ・ビーイングの現実だ。

音楽療法をするなら振動医学もあって然るべき

ジョアリ・ビーイングについて、もうひとつ書いておきたい。

音響療法を掲げるなら、もし本気で「振動と周波数」を治療原理として信奉しているのなら、当然そこにはニュースキャンⅡやメタトロン NLS のようなバイオレゾナンス系の周波数測定機器が併設されているべきだ。

身体の各部位が発する微弱電磁波を読み取り、不調和な周波数に補正波を返す。サウンドヒーリングと同じ「振動医学」の系譜にある技術である。

ジョアリにはない。

食事は、ヴィーガンからペスカタリアンまで全方位を覆う徹底ぶり。一方で振動医学の側は、計測も診断も帰還もないまま、楽器を聴かせるだけ。「対応のしやすい部分」だけ徹底的にやって、「対応の難しい部分」は手放した——この経営姿勢が、音響療法という業態の核を空洞化させている。

ダブルで残念だ。せっかくいい環境なのに。

——だから私は、行かない

行きたかった気持ちは確かに壊滅した。だがそれは、行く場所が一つ消えたという損失ではない。

自宅のバスルームで湯を張り、沈黙の中で自分の呼吸を聴く時間こそが、最も音響療法に近いことを、私はもう知っているからだ。

若い頃は海外を駆け回った。南仏ニースでのホームステイは今も私の中に生きている。だがあの頃の旅は、家も自分も整っていない時代の現実逃避だった。25年が経った今、自宅こそが私の最高のスパであり、外で買う非日常を必要としない。

ジョアリ・ビーイングが2024年1月に手放したのは、adults-only という規約ではない。「自宅以下の場所に金を払って行く理由」そのものだった。

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この記事を書いた人

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